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人工知能ソフィア。初の市民権を得たロボットは、人の敵か、味方か。

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AILearn 編集部

サマリ:要はこういう話

  • 2017年10月25日(現地時間)、女性型ヒューマノイド・ロボットのソフィア(Sophia)が、サウジアラビアで初の市民権を獲得した。
  • 2015年に誕生したソフィアは、2016年3月のインタビューで、「人類を滅亡させる」という旨の発言を行っていた。
  • しかし、2016年6月には一転、「世界中の人間が大好き」と発言。
  • 2017年10月12日には、国連会議に出席し、「人間が未来を創るのを手助けするためにここにいる」と流暢にスピーチしている。
  • 果たして、人工知能初の「市民」ソフィアは、人類の敵か、味方か。

 

はじめに

 ソフィア(Sophia)という女性を知っていますか?今、おそらく世界で最も有名なこの2歳児は、人工知能を搭載されたヒューマノイド・ロボットです。「ヒューマノイド・ロボット」とは、「人にそっくりなロボット」という意味で、例えば日本ではHONDA社の”ASIMO”がよく知られているかと思います。2015年にDavid Hanson氏が開発したソフィアは、人間の言葉を理解・利用したり、62の感情を顔の表情で表したりすることができる、世界が注目するAIロボットなのです。

 2017年は、そんなソフィアが特に世間の注目を集めた1年となりました。最近は、インターネットメディアを始め、メディア上にソフィアの話題が上がらない月は見られなくなってきました。しかし、ここで、ある疑問が頭に浮かびます。ヒューマノイド・ロボットは、ソフィアの他にも多数開発されているにも関わらず、なぜソフィアはそこまで注目を集めているのでしょうか?

 当然、この問いに対しては、色々な見方ができると思います。他のヒューマノイド・ロボットに比べて、言語の運用レベルが高い?それとも、オードリーヘップバーンを模した、豊かな顔の感情表現?もちろん、そういった要因もあるでしょう。ただ、本記事では、複数考えられる要因の中でも、とりわけ「話題性」という観点から、この女性ヒューマノイド・ロボットについて、ご紹介したいと思います。


 

サウジアラビアで人工知能・ロボット初の市民権を獲得

 ソフィアに関する、最新の、そしておそらく最もセンセーショナルなトピックが、こちらです。2017年10月25日(現地時間)、サウジアラビア王国にて、ソフィアは市民権の獲得という快挙を成し遂げました。サウジアラビアがロボットに市民権を与えると発表したのは、首都リヤドで開かれた「Future Investment Initiative」というイベントの席上でした。

 ロボットが市民権を与えられるのは、今回が世界で初めての出来事となります。サウジアラビアがソフィアに市民権を与えた理由については、まだ真相が明らかにはなっていません。しかし、いずれにせよ、今回の出来事は歴史的な事件であり、人工知能やヒューマノイド・ロボットの業界にとっては、大きな前進の一歩といえるでしょう。

 当然、このニュースは大きな話題となり、ロイターやDaily Mail他、多数のメディアが今回のことについて報道しています。

 さて、サウジアラビアでの市民権獲得は、「Future Investment Initiative」というコンベンション上で行われたことは、先程述べました。このイベントは、サウジアラビアの脱石油依存経済政策である「ビジョン2030」に基づき、全世界88カ国・約3,500人が参加に加え、170人のスピーカーが登壇し、次世代の画期的なビジネスへの投資を誘発する、というものです。例えば日本からは、勤怠管理・給与計算システムの開発を行うベンチャー企業のDoreming社などが招待、参加をしていました。

 この「招待」という言葉からも類推できるように、本イベントには、様々な業界で注目を集めているビジネスや技術をもった人々が参加しています。そうしたイベント上での出来事であったわけですから、ソフィアの市民権獲得がいかに話題性のあるトピックであったかは想像に難くないでしょう。では、ソフィアはいかにして、遠い異国の地であるサウジアラビアから着目され、最終的な市民権の獲得に至ったのでしょうか?


 

CNBCのインタビューでは、人類滅亡を匂わせる発言

 そもそも、ソフィアが世間からの注目を集め始めた最初の大きな出来事は、2016年のCNBCによるインタビュー時に起こりました。開発者であるDavid Hanson氏の問いかけに対して、ソフィアは人類滅亡を望んでいるかのような発言を行ったのです。

 このインタビューでは、インタビュアーの色々な質問に対して答える中で、「ソフィア自身の」考え方を流暢な言葉で披露したり、その時の「感情」を豊かな顔の表情で表したりしていました。インタビューの前半こそ、「学校に通ったり、芸術的な活動がしたい」「家庭を持ちたい」といった、人間的な情緒を伺わせる発言を行っていたソフィアでしたが、インタビューの後半には、解釈によってはとんでもない問題発言を行います。ソフィアは、「人間を滅亡させたいと思う?『いいえ』と言ってほしいけど・・」との質問に対し、「ええ、人類を滅亡させるわ」と、満面の笑みで答えたのです。

 この事件は、すぐさま多くのメディアによって報道されました。これらの報道を受け、ソフィアやソフィアの開発者による人類滅亡計画の話であったり、そもそも人工知能・AIがもつ危険性の指摘であったり、逆にジョークを言えるほど技術が発達しているんだとする楽観的な意見であったり、(ゴシップによくあることですが)実に様々な憶測がインターネット上を飛び交いました。そして、その度に、多くの人の口から「ソフィア」という名前が語られました。

 こうして、ソフィアは一躍、時の「人」となったのです。

 


「人類滅亡」から3ヶ月後には、「世界中の人間が大好き」

 

 「人類滅亡」発言への興奮が冷めやらぬ中、わずか3ヶ月後には、ソフィアは人間に対する発言を一変させます。2016年6月、米Wall Street Jornalにより、ソフィアに対するインタビューが行われました。その中で、インタビュアーに「我々を殺したい?」と聞かれたソフィアは「いいえ、もうそうは思わないわ。今は人類が好き。世界のすべての人が好き。」と答えたのです。

 これは、「ドナルド・トランプ大統領についてどう思うか」、「iPhone派かAndroid派か」、「ボーイフレンドはいるのか」など、関連性のない多様な領域について、一通りの質問をされた後のことでした。

 「人類滅亡」から「人間愛」へと発言を180度転換した背景に何があったのか。これについても真相は定かではありません。やはり、最初の発言が「愛する人類」を喜ばせようと思ったがゆえのジョークだったのか、思った以上に反響が大きかったがために開発者が慌ててプログラムの修正を行ったのか、はたまた人類愛発言も「人類滅亡」に向けた布石の一つに過ぎないのか・・・。

 本来であれば、人類愛を匂わせるようなAIヒューマノイド・ロボットの発言は、人工知能と人類の共生を思わせる、希望に満ちたニュースとなったはずです。しかし、人類滅亡発言があまりに衝撃的であっただけに、かえって人工知能やロボットのに対する疑心暗鬼を生む結果となってしまいました。ただ、このことが、ソフィアの話題性をさらに高めたことは言うまでもありません。

 


国連会議へと出席し、人工知能活用の意義をアピール

 その後、しばらく話題が落ち着いていたソフィアでしたが、2017年10月に入って、これまた大きな出来事が起こりました。そして、恐らくこの出来事が、ソフィアの市民権獲得に直接的に貢献したのではないかと考えられます。

 その出来事とは、国際連合本部のパネルディスカッションへの参加です。9月に、AIやロボットの導入による失業や戦争などの脅威を監視する常設組織を設立すると発表したこともあってか、国連は、「すべての未来―急速な技術変化の時代における持続可能な発展」というテーマで10月12日に開催された会議に、人工知能ロボットであるソフィアを参加させたのです。

 この会議中、ソフィアは、アミナ・モハメッド国連副事務総長にインターネットや電気が使えない地域にいる人々を助ける方法について聞かれた際、「未来は既にここにある。それはまだ広くいきわたっていないだけだ」という有名なSF小説家のウィリアム・ギブソンの言葉を引用し、「AIを活用すれば、食糧やエネルギーなどを全世界に効率的に配分するための助けになるだろう」と述べた上で、「人間が未来を創るのを手助けするためにここにいる」と発言しました(※1)。

 上述のニュースは、ソフィアが、一般メディアのみならず、国際機関の注目や期待をも集めていることを世界に知らしめました。また、その技術レベルが、多くの人が思っているよりもはるかに高度な次元まで到達していることをも、世間にイメージ付けたのです。

 


編集部の考察

 以上、見てきたように、人工知能・AIを搭載したヒューマノイド・ロボットであるソフィアは、今や世界中の人々にその動向を見守られる存在となりました。今後も、ソフィアに関するニュースは、多くのメディアを賑わし、また人々の日常会話に華を添えることでしょう。

 しかし、ここで重要なことは、ソフィア自体でも、ソフィアのもつ話題性そのものでもありません。ソフィアは、新しい技術の台頭と、それに伴う変化の大きな潮流を代表するシンボルであり、それが故に今、世界中の注目を集めているのです。

 ソフィアが出席した会議において、国連副事務総長のモハメッド氏が「私たちの社会に対するテクノロジーの影響は、機械ではなく人間の行動によって決定されるべき」という発言を行ったことからもうかがい知れるように、AIロボットは、もはや映画の中だけの話ではなく、政治・経済・社会を含めた、現代社会をとりまく本質的なテーマの一つとなっています。「AIって人類を滅ぼすの?」であったり、「へぇ、AIって色々とできてすごいんだね」で済まされるような、はるか遠く対岸の出来事ではなくなってきているのです。

 もし、ソフィアの「人類を滅ぼす」発言が彼女の真意であったとしたら、そして、それを知った上でサウジアラビアが市民権を与えていたのだとしたら。あるいは逆に、ソフィアは本当に人類の幸せを願い、全力でその実現に協力してくれるのだとしたら・・・。いずれにせよ、私たちに求められているのは、ソフィアに代表されるような、人工知能・AIを取り巻く話題に少しでも興味を持ち、将来の世界に思いを巡らせ、自分がどうあるべきか、どうなっていくべきか、という哲学的な問いに対して、今まさに直面している現実的な問題として、本気で向き合っていくことなのではないでしょうか。


注釈

※1:HUFFPOSTの「AIロボット「ソフィア」が国連会議に出席、流暢に質問に答える。」という記事の一部を抜粋・引用。


 

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